本サイト distant-earth.org 企画,『日本への絵手紙2001』に,”Regret“と”Waves“の計2曲を提供してくれた歌手キヴァさんについて紹介します.
キヴァ・シモヴァ (Kiva Simova) は,チェコのプラハを活動拠点とするカナダ人女性歌手・鍵盤奏者で,倍音唱法(いわゆる喉歌)の使い手として世界的な評価を受けている人です.キヴァは,一人で同時に二声以上の旋律を歌い分けるこの驚くべき能力を,彼女自身の作曲やアレンジによるワールド・ビート/ジャズ/フォーク/実験音楽/ポップの中に溶け込ませ,『この世のものとは思えない』音楽を創り上げてきました.
これまでに世界中の様々の音楽家たちとコラボレーションし,彼女のインスピレーションに満ちた即興的な歌声は,様々なアーティストの作品中に刻まれてきました.例えば:
ジェニファー・ベレザン (Jennifer Berezan)
プラハ出身のアカペラ・カルテット,イエロー・シスターズ (the Yellow Sisters)
シベリア出身の各種民族楽器演奏家ナディシャーナ (Vladiswar Nadishana). イヌイット喉歌シンガーのタニヤ・タガック(Tanya Tagaq)などなど.
さらには,ラロトンガ島周辺に生息するクジラとの共演さえ果たしています.(水中マイクで録音したクジラの歌声に,即興で歌声を重ねたのだそうです).
http://harmonicovertones.com/blog/underwater-voices/
キヴァは今日に至るまで,実に多様な音楽的素養を積み重ねてきており,古典ピアノ奏法,ジャズ・ピアノ奏法はもとより,ロック,ポップ,リズム&ブルース等の演奏形態を探求するうち,自分の目指すべき音楽とは,人と人,文化と文化とが交じり合う場所に自ずと生まれてくる混合的な音楽であって,特定の名前でレッテルを貼ることなど到底出来そうにないと気付くに至りました.
つい最近,ベルギーの Olla Vogala Orchestra と共演した彼女ですが,2001年にヘルシンキで開催されたキエク喉歌音楽祭 (KIEKU throat singing festival in Helsinki) では主賓歌手として舞台に立ち,それはフィンランド,デンマーク,日本,ロシア,アルバニア,チェコ共和国,アイスランド等での公演へと繋がりました.それよりさらに遡る1995年には,トゥヴァ共和国主催の喉歌国際シンポジウム (the International Symposium of Throat Singing in the Republic of Tuva) において,当時はまだ珍しい外国人招待歌手の中にあって紅一点だったのが彼女,キヴァだったということです.キヴァはその時の様子を収めたドキュメンタリー映画 ‘Genghis Blues’ の中で,現地の少年少女喉歌コンテストの審査員の一人として登場しています.
http://www.genghisblues.com/
また,キヴァは,今や泣く子も黙るマルチ・プラチナ・ディスク売り上げグループ,クラッシュ・テスト・ダミーズ (Crash Test Dummies) のCD ‘God Shuffled His Feet’ 発売記念ワールド・ツアーのサポート・メンバーとして1994-1995年の期間,文字通り世界中を飛び回った経験があります.来る夜も来る夜もチケット売り切れ状態で集まった満員の聴衆に向かって,その独特の歌声を響かせました.懐かしくも誉れ高きロンドンのローヤル・アルバート・ホールでの晴れ舞台
http://www.royalalberthall.com/
サタディー・ナイト・ライブへの出演.
http://www.nbc.com/saturday-night-live/
デイビッド・レターマンのレート・ショーでの演奏.
http://www.cbs.com/late_night/late_show/
Crash Test Dummies on The Late Show with David Letterman (9/21/94)
Afternoons & Coffeespoons – Crash Test Dummies – 1994
そしてトゥディー・ショー http://www.today.com/
などなどでのパフォーマンス等も印象深いものでした.
彼女の最新作CD 『パルス』 (Pulse) は、辛口批評で有名なアップタウン・マガジンから,まれに見る A 評価を受け,きわめて高く称賛されました.カナダのウィニペグ・フォーク・フェスティバルの前任の芸術担当ディレクター,リック・フェントン氏 (Rick Fenton) は,次のように書いています.
「キヴァは音楽的理想とそれを現実にし得る才能を併せ持つ稀有の芸術家である.彼女の才能は,音楽と文化の地勢的な境界をはるかに超越している.」
今回,彼女が満を持して発表した『パルス』は,彼女のデビュー作『ザ・ラダー』 (The Ladder) とまるで対を成すものであるかのように決定的,運命的な作品といえます.今,彼女の音楽は,もともと比較的自由なものであるはずの現代の音楽の範疇をさらにも飛び越え,再び展開を始めています.やがて世界言語ともなるべき音楽に対するヴィジョン.日夜休むことなく刻まれ,世界の様々な場所から聞こえてくるリズム,重層的なハーモニー,そしてそれらのすべてを自在に繋ぎ合わせ,鮮明に色付けることのできる驚くべき発声法と作曲能力.革新的なものを求める西洋的な要素と東洋的な要素とが絡み合いながら,多重の層を織り成し,影響を及ぼし合い,結果として,混血的な進化変容の音楽の一形態が創出されるに至っています.
彼女は以下の各合唱団の現役メンバーとして,
European Overtone Choir http://www.overtonechoir.eu/
International Choir of Prague http://www.praguechoir.cz/
また,以下の合唱団の元メンバーとして.
Spektrum overtone choir http://www.test.alikvotnispektrum.cz/en
テノール・パートや独唱者としての社会的実績があります.
1991年以降,倍音唱法のワークショップ複数で教えながら,倍音唱法による現代的な合唱曲の作曲も精力的に行っています.これには,例えば,彼女自身が運営するプラハ拠点の合唱団,Auralia のために作ったものなども含まれます.
http://www.slideshare.net/kivasimova/
詳細は、彼女の公式ウェブサイトを参照のこと:
www.kivaweb.com
www.harmonicovertones.com
Japanese translation: Atsuro Seto